No.174 元気のチャージ | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.174 元気のチャージ

2023/08/02

それは突然やってきた。冷蔵庫の寿命である。購入したのは、ロシアから完全帰国した直後のことだから、すでに17年も頑張ってくれたことになる。ネットで見たところでは、10年前後とも言われる冷蔵庫の平均寿命を考えれば、「よく頑張ってくれた」と、ねぎらいの言葉もかけたいところだ。しかも、この猛暑。冷蔵庫もさぞ辛かっただろう。まず、氷がなかなかできなくなった。冬はともかく、夏、特に今年の夏は氷なしではきついと思いつつ、嫌な予感がして、買い置きしていたアイスバーを確認した。案の定、すでにアイスバーの形をなさず、ただの液体と化していた。無念なり。

そんなわけで、8月を迎える前に、新しい冷蔵庫との生活が始まった。この暑さの中、しっかり働いてくれる冷蔵庫はありがたい。うれしくて、液体化したアイスバーと同じものを新たに買い直して、夕食後の楽しみにしている。これで、何とかこの夏も乗り切れそうだ。冷蔵庫さまさまである。

それにしても、暑い。天気予報の週間予報で、ずらりと続く「真っ赤な太陽マーク」を見るだけで、ため息が出てしまう。留学クラスでインドの留学生が、「日本ではシャワーがお湯なのでびっくりしました。インドでは、シャワーは一年中、水しか使いません」と話していたが、この夏に限って言えば、水シャワー、水風呂でいいのではないかと思う。ついに日本も亜熱帯の仲間入りだろうか。

さて、そんな中、ウラジオストクの元学生と再会した。前回会ったときから、実に10年近く経つ。彼女は日本での留学経験もあり、長年働いていたこともあって、流暢な日本語を話すことができる。ここ数年、連絡が途絶えてしまっていたのだが、少し前にメールがあり、「夏休みに日本へ行くので、会いたいです」とのこと。そのメールによれば、なぜか現在はモスクワ在住とのことだった。

待ち合わせに現れた彼女の、あふれんばかりの笑顔を見て安心した。いっしょに連れてくると話していた子どもは、知り合いに水族館へ連れて行ってもらっていると言い、1時間半ほど二人きりでじっくり話ができた。モスクワでの生活は、今のところ特に大変なことはなく、元気にやっているようだ。「私はもう〇歳になりました」と笑う姿に、さまざまな経験を経た「たくましさ」を感じた。

帰り際、私が伝票を手にレジに向かうと、「先生、ダメです。私が払います」と、伝票を奪おうとした。私は、冗談っぽく彼女の手の甲をパチンと叩いて、「それ、よく日本のおばさんがやる、レジ前のやりとりだから。恥ずかしいから、やめてね」と言うと、ようやく彼女も笑いながら手を引っ込めた。レジのアルバイトらしき女性も笑っている。私にとっては、ちょっと幸せな瞬間だった。次に会えるのは、日本か、ロシアか、それとも…。二人で「早く平和になるといいね」と話して、笑顔で別れた。帰り道、なぜか足取りが軽かった。知らない間に、元気がチャージできていたようだ。