日本語教育能力検定試験「マンボウ」問題

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総合問題

登録日

2007年08月01日

問題

次の文章を読み、後の問いに答えよ。

異文化コミュニケーションに臨むにあたって、最も大切な心的態度として、A文化相対主義が挙げられる。文化相対主義は、自分自身が持つ文化を最高であると考える態度を意味する自民族中心主義と対立する概念である。
異文化から自文化を観察する場合に、一方が優れていて他方が劣ったり、またその逆もありえないとする立場である。この概念が文化人類学の発展を促したことはいうまでもない。しかし、異文化コミュニケーションは、実際にこの概念を取り入れきれているのだろうか。異文化コミュニケーションに従事する者の多くが、「全くの」異文化に対しては、曲がりなりにも文化相対主義を念頭においているようだが、同一文化内の下位文化に対しては、文化相対主義を堅持できないでいるのではないか。お互いの文化を相対的に捉え損ねているのではないか。ジェレネーション・ギャップも文化を相対的に捉えれば、埋められるのではないか。
文化相対主義を補強する態度というものがあるとすれば、何であろうか。それは心理学でいうところの“ToleranceforAmbiguity(曖昧性に対する許容性)”だと思う。B自文化を知るということは、気の長い、時間のかかる仕事である。ましてや異文化となると、一生の仕事ではないか。異文化コミュニケーションには誤解がつきものである。その際に、自文化にある既存の価値判断を即座に下すのではなく、むしろ、それをC一旦保留することである。これもまた、「言うは易く、行うが難し」であるが、この保留の態度を学べば、異文化コミュニケーション中の失敗も、知的に楽しめるようになるはずである。異文化コミュニケーションを知り急ぐことはない、とでも言っておこう。

 

問1)

文章中の下線部A「文化相対主義」の考え方を最も反映しているものを選べ。

  1. 多様な民族集団が一つに融合する「人種のるつぼ」とみる見方。
  2. 相対的に言葉よりもコンテキストを重視する「沈黙の言葉」とみる見方
  3. 各民族集団が独自の文化を持ったまま混在する「サラダボウル」とみる見方
  4. すべての文化がそれなりの価値を内在し「文化的に質的序列なし」とみる見方

 

問2)

文章中の下線部B「自文化を知る」という自覚的態度について述べたキーワードはどれか。

  1. エスノサイド
  2. エスノセントリズム
  3. カルチュアル・リテラシー
  4. カルチュアル・アウェアネス

 

問3)

文章中の下線部C「一旦保留すること」に関して、哲学者フッサールが現象学で使った用語はどれか。

  1. エポケー
  2. ブロッキング
  3. セルフ・モニタリング
  4. コグニティブ・コンフリクト

解答

問1)4
問2)4
問3)1

問題解説

問1)

文化相対主義とは、どの文化も同列に位置づけ、相互に異質であっても優劣の違いはないとする考え方である。

問2)

文化覚醒水準ともいう。自分の文化への自覚、自己への気づきで、自文化を他社の視点から「異文化」として眺めることができる視野の広さであり、柔軟性のことである。

問3)

ギリシャ語で「判断停止」の意。自分の文化の物差しで価値判断できないときは、一旦態度を保留するということ。

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