日本語教育能力検定試験「マンボウ」問題
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日本語教育の歴史と現状
登録日
2007年08月08日
問題
次の文章を読み、後の問いに答えよ。
ブラジル出身者が、その狭い日本語のレパートリーで発話意図をどのように実現するのかを見てみる。ここでは、時間概念がどのように表現されているかを観察する。
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(1) |
A:「にほんごのにほんごのべんきょういましていますか。」 |
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Aが日本語話者で、Bがブラジル出身の男性である。来日後7ヶ月を経た時点で行ったインタビューの一部である。AとBの時間概念が細かいところまで一致しているかどうかは別として、両者にそれが備わっていることは前提とすることができよう。しかし、それを日本語でどう表すかに関しては両者の間に大きな隔たりがある。仮に同じAの質問に日本語母語話者が答えるとしたら、「ええ、まいにちやっています」くらいの発話が予想できよう。それにもかかわらずこの男性が毎日日本語を勉強していることは理解できる。
もう一つ別の例を挙げよう。
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(2) |
「マルシア…、マルシアさんえーとだいがくおわりだいがくおわり。」 |
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このブラジル人話者に、7枚の写真の中に写っているマルシアという女性について話してもらった際の発話の一部である。写真は、大学の卒業式のものであった。「卒業式」や「卒業」という語を知らないこの人はそれを「だいがくおわり」という表現で表している。こうしたハイブリット(混じりあった)な言語の変種の発話にもそれなりの構造があって、「ええ、まいにちやっています」や「だいがくをそつぎょうして…」と同じくらい十分にコミュニケーションの機能を満たしているということができるのである。
問1) |
(1)のAの質問の意図からみてブラジル人話者の発話Bの特徴について述べたものとして最も適当なものを選べ。
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問2) |
(1)のブラジル人の発話Bから類推できる発話行為について述べたものとして最も適当なものを選べ。
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問3) |
(1)や(2)のような言語調査で、ある特定の言語をありのままに発音、発話してその言語の分析に役立つ資料を提供しようとする人を何というか。
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問4) |
(2)のブラジル人の発話について述べた。最も適当なものを選べ。
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解答
問1)2
問2)4
問3)3
問4)2
問題解説
問1) |
特に時間の副詞は、テンスやアスペクトの文法マーキングの機能を代行しうる。 |
問2) |
質問者の「いましていますか」によって話題の時間が設定されているので、Bはコンテキストに依存して、この時間設定を変えない限り、そのまま引き継ぐことができる。 |
問3) |
被験者ともいう。 |
問4) |
「おわり」という名詞で一つの時間の区切りを示し、話者の時間概念が通じている。 |