日本語教育能力検定試験「マンボウ」問題

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世界と日本

登録日

2006年08月17日

問題

次の文を読み、各問いに答えよ。

 明治維新以降、日本が近代化の努力を始めてから、日本人論が書かれた三つの特徴的な時期があった。日清・日露の高揚期、昭和の防衛的で内向的な時期、そして戦後の経済復興の半世紀である。
  戦後の日本人論を読むと、奇妙なことにいろいろな人が夏目漱石を引くことに気がつく。『「甘え」の構造』、イザヤ・ベンダサンの『日本人とユダヤ人』。実は、戦後最初の日本人論というべき、アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトの『菊と刀』にも『坊ちゃん』の一節が引かれている。
  漱石の小説の中の日本人が、あるヒントを与えてくれるのは確かである。しかし、いま考えたいのは、漱石でわかる「日本人」もいれば、漱石ではもうわからなくなっている「日本人」も現在の日本には、いるはずだということだ。
  そもそも「日本人」を「全体」としてとらえようとするとき、当然、時間軸に沿って連続する人間集団、共同体、というものを想定する。近代の時間的流れの中で、変わらないところに日本人の特質を見出す。そうすると、漱石とは限らず、日本人論は「日本人論用の日本人」、そうしたものを作り出していないだろうか、と疑いがわく。いつしか「日本人論用の日本人」という(①)がいくつかできあがる。

 

問1) 文章中の下線部Aの時期に書かれていない本はどれか。

  1. 岡倉天心の『茶の本』
  2. 新渡戸稲造の『武士道』
  3. 内村鑑三の『代表的日本人』
  4. 九鬼周造の『「いき」の構造』

 

問2) 文章中の下線部Bの『「甘え」の構造』の著者は誰か。

  1. 梅棹忠夫
  2. 作田啓一
  3. 土居健郎
  4. 和辻哲郎

 

問3) 文章中の下線部Cの人の考え方として最も適当なものを選べ。

  1. 文化はコミュニケーションである。
  2. 人間の思考、世界観は話者の母語に依存する。
  3. ある文化の型は、個人のパーソナリティを形成する力を持つ。
  4. 自民族の価値観から他民族の行動や価値観を評価する態度を持つ。

 

問4) 文章中の(①)に入る最も適当なものを選べ。

  1. プロトタイプ
  2. ステレオタイプ
  3. サブカルチャー
  4. モニターモデル

 

解答

問1) 4
問2) 3
問3) 3
問4) 2

問題解説

問1)

日清戦争(1894~95)から日露戦争(1904~05)までの約10年間は、日本人論隆盛の第一期といえる。4以外の3冊は、最初英文で書かれ欧米の読者に向けて発刊された。

問2)

土居建郎(どいたけお)、医学博士。「甘え」は日本人独特の心理であり、「甘え」なくしては日本人や日本文化は語れない。「甘え」という概念について、その論理や病理など多角的な面から論じた。

問3)

自身の著『文化の型の捉え方』(1934)では、あらゆる人間社会の中で現れてくる行動の形を記述する中での文化の相対主義を表している。

 

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