海外好きが高じて日本語教師になった話 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー
    TOP » コラム » 海外好きが高じて日本語教師になった話

海外好きが高じて日本語教師になった話

2021/06/16

日本語教師を目指す方の中には、「海外に住みたい」、「海外で働きたい」と考えている方が多くいらっしゃいます。アークアカデミーの新宿日本語学校で教務を務める細田も、今では新人を養成するベテランですが、日本語教師を志したきっかけは“海外好き”でした。ちょっとした憧れが、一生の仕事につながることもある。それを体現した本人から、これまでの教師人生について聞きました。

「外国に住みたい」がきっかけ

私が初めて「日本語教師」という仕事を知ったのは、トルコ旅行中に知人から現地で働く日本語教師を紹介された時です。その頃は、会社勤めをしながら、長期休暇のたびに海外旅行をしていて、いつか外国に住んでみたいなと、漠然と考えていました。そこで、初めて日本語教師という職業を知り、日本語教師なら外国で生活できると思い始めました。

 

それから、少しずつ日本語教師という仕事について、日本語教師養成講座や日本語教育能力検定試験について、調べていました。そうした中で、二つの目の出会いとして、友人宅でホームステイをしているキューバ人と話す機会がありました。そのころのキューバはまだまだ自由に外国に行き来できるような状態ではなかったのですが、その方が日本文化の素晴らしさをとても流暢な日本語で語ったことに感動しました。遠く離れたキューバで日本語に触れ、コツコツと勉強してきた姿に感動し、こういう人たちの力になるような仕事をしたいと思い、それから、本格的に日本語教師を目指そうと決意しました。

新米日本語教師の時に苦労したこと

日本語講師養成講座を修了し、日本語学校で留学生に教え始めましたが、準備に時間がかかり日々時間に追われていました。それでも、授業中の学生の質問に満足に答えられないこともあり、その時の学生のがっかりした表情や質問された内容は今でも覚えています。実際に日本語教師になってみて、それまで習った養成講座の内容、教務や先輩教師のアドバイスも大変役に立ったのですが、一番教えてくれたのは学生だと思いました。新人時代は失敗の連続で、授業がうまくいかず泣きながら帰ったこともありますが、あの時の失敗が今の糧になっているように思います。

日本語教師は「教える」だけではなく、「教えられる」立場でもある

日本で数年経験を積んで、「いざ海外へ」香港で教えることになりました。香港で日本語を勉強する学生の主な理由は趣味です。日本のアニメ・ドラマが好き、日本へ旅行するのが好きという理由で勉強しているのです。日本へは毎年行くという人も多く、行ったことがない観光地について尋ねられることも多かったです。また、香港の学校では「学生=お客様」でしたので、いかに満足感を与える授業を提供できるか、上達させるかに気を配り、ここでも学生に鍛えられました。学生もはっきり、「いい」「悪い」を言うのでわかりやすい反面、落ち込むこともありました。ここで、教えるだけでなく、海外で生活することがどういうことか、外国で生活しているだけでは語学は上達しないこと等、日本に来る留学生の気持ちがより理解できるようになった気がします。また、そこで自学で日本語能力試験N1レベルに到達している学生と出会い、教師の仕事を改めて考えるようになりました。

日本語教師の仕事は「学び合い」。あなたには、学び続ける意志はありますか

今は、日本の日本語学校で働いています。日本語を学生に直接教えるというより、コースデザインや先生方の支援を行うのが主な業務です。初めは自信なさそうに授業をしていた先生が、経験を積むことで1年後は堂々としている姿を見て、教師支援の仕事にやりがいを持つようになりました。先生方への支援も、初めは自分の考え方や形を押し付けてうまくいかなかったこともあります。相手の話をきくこと、その先生の持ち味を生かすような働きかけをすることを心掛けています。学生に対しても以前は「教える」ことに躍起になっていたように思います。今は、教師から学生への一方的ではなく、教師と学生との「学び合い」ができるような環境を作っていきたいと思うようになりました。教師の学び終わりはなく、自らも変化を恐れず、学び続けていきたいと思っています。

 


アークアカデミー新宿校 教務 細田 敬子