No.156 褒める&褒められる
2022/03/28
2022年も気がつけば桜の季節。学校では3月11日に卒業式を迎えた。残念ながら、今年も全校での卒業式は実現せず、クラス別の式となってしまったけれど、スタッフの愛を随所に感じた。式の前日、私が対面授業のため登校したときには、すでに卒業式ムードが漂っていた。1階のエントランスでは、昨年と同様にバルーンで作られたアーチがお出迎え。校内にもきれいに飾りつけが施されている。そして、机には卒業証書と卒業アルバムが、クラスごとに積まれていた。準備万端である。
学校の授業は卒業式前日まで行われたが、成績を決めるために、期末テストは早めに実施された。私は今期2クラスで会話の授業を担当しており、どちらも早々にテストを終えたので、ラストの授業はゆったり気分で「褒める」をテーマにすることにした。このテーマを聞くと、以前あるテキストを使って行った授業を思い出す。リレースタイルで、クラスメートを褒めていくという簡単なものだったが、これがけっこう盛り上がった。相手の持っているものでも、能力でも、性格でも、もちろん外見でも何でもいい。褒められた学生が、とっさにどう返すかも、とても興味深い。そんなわけで、最後のテーマとしてハズレはないかと、2クラスとも迷うことなくこのテーマに決めた。
2つのうち1つのクラスは、全員が一昨年に来日し、全員卒業生というクラス。実際に同じ教室で勉強していたので、お互いのことがよくわかっているはずだ。当日は対面授業だったため、「褒める相手」はくじ引きで決定。いつも思ってはいても、言葉にすることはないのだろう。みんな少し恥ずかしそうに、相手を称えていた。果たしてどんな言葉が出てくるかと思っていたが、どれも「なるほど」と思わせる内容で、予想以上にクラスメートのことを見ていたのだなと感心した。
もう1つのクラスは、ほとんどの学生は日本在住だが、まだ来日が叶わず、オンラインで勉強を続けながら入国待ちの学生が数名。中には時差14時間の国から、ほぼ欠席もなく熱心に取り組んでいる学生もいる。このクラスはすべてハイブリッド授業で、人数が多いこともあり、「褒める」についてはこちらから指名して、「クラスの誰を褒めたいか」を聞いていくというスタイルを取った。
さて、なかなかユニークな「告白」が続き、ラストを飾ったのは、いつも一番後ろの席に座っている男子学生だ。珍しく、自ら手を挙げて、言いたいことがあるという。相手は、ずっとオンラインで頑張っていた2人の学生。せっかくなので教壇まで出てきて、カメラに向かって語りかけてもらった。「2人は、いつもカメラをオンにして、とても積極的に勉強していました。すごいです。尊敬します」。褒められた2人は照れながらも、笑顔になった。教室では拍手が起きた。その拍手で、画面を通して共に学んだ学生たちが、ひとつになった気がした。もちろん、私も大きく手を叩いていた。