No.143 うちで旅気分 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.143 うちで旅気分

2021/05/20

GWが終わった。カレンダーでは5日までの休日だったが、学校は6日と7日も休み。去年に続いて、基本は「ステイホーム」だったため、メリハリに欠け、消化不良の感は否めない。が、それでも「GW」という言葉の響きには、妙にココロを弾ませる魔力がある。それだけに、翌日10日の授業を前にした日曜日の夜、「ああ、ついに終わってしまうのか」と、気分はずっしり重かった。


今期、私が月曜日に担当しているのは、朝9時半からのクラス。全員がまだ未入国のクラスだ。アジアの学生ではあるが、それでも1、2時間といった時差がある。つまり、学生たちにとっては、かなり早朝スタートとなっている。当然ながら、GW中は授業が休みだったわけで、さぞ彼らも眠そうな表情なのではないか…と予想した。休みボケで頭の働きが心配な自分を棚に上げ、そう思うことで「大丈夫、大丈夫。学生もきっと眠いはずだから」と言い聞かせた。もちろん、授業に手を抜くわけではない。そう思うことで、少しでもパソコンに向かう自分の気持ちを軽くしようという作戦だ。


しかし、彼らは違った。「もしや、今日から授業だというのを忘れている学生もいるのでは?」という心配もあったが、9時半には全員が揃った。まだ初級クラスのため、出欠をとりながらウォーミングアップとして「休みの間、何をしましたか」と聞いてみる。既にワクチンを接種した学生もいて、比較的自由に旅行を楽しんだという学生もいれば、「毎日、日本語を勉強しました」という声も。みんな思いのほか元気で、「今日からまた頑張ろう」という表情が見え、ほっとした瞬間だった。


さて、今年のGWを迎える前に、私が手に入れたものがある。『おうち台湾』という本である。自由に旅行できない今、せめてその気分だけでも、と足を運んでいる日本橋の誠品生活で見つけたのだが、要は「現地には行けないけれど、近くでもこんなに台湾を楽しめますよ」という内容だ。これが面白い。既に知っている店もあるが、「へぇー、こんな所があるんだ」という発見も多く、ページをめくっていると、現地の熱気や喧騒の中にいるような何とも言えない「至福感」に包まれるのである。寝る前や、ちょっとした合間での「おうちで旅気分」。1冊の癒し効果は、予想を超えていた。


そんな中、私は誕生日を迎えた。その朝、まだ眠気から抜けきれずにいるとき、ラインが届いた。誰か…と見てみると、台湾の元学生からの「ハッピーバースデイ!」だった。彼女とはもう23年の付き合いになる。「日本語を忘れてしまいました」と、前回の連絡は日本語と中国語のミックスでやっと成り立っていたのだが、「また日本語を勉強します」と宣言していた彼女からの久しぶりのラインは、とてもきれいな日本語、しかも長文だ。眠気も吹き飛び、とてもあたたかい気持ちになる。大切なものと、ずっとつながっている…。それだけで、私には至福の誕生日となった。



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