日本語教育能力検定試験「マンボウ」問題

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言語と社会の関係

登録日

2013年03月12日

問題

次の文章を読み,下の問いに答えよ。

私たちが言語によるコミュニケーションを行うに際して,どのようなルールにのっとっているのであろうか。言語学の語用論と呼ばれる分野では,様々な考えが提唱されているが,その中で,グライスは「協調の原理」という概念を提唱した。話し手と聞き手との共同作業である会話には遵守すべき一定の作法とも言うべき基本原則が存在し,それによって言外の意味が解釈されると主張している。この基本原則として量,質,関係性, (1) の4つの格率があるとしている。

量の格率とは,相手に求められている程度の情報を与えよということであり,質の格率とは, (2) は言うなということである。関係性の格率というのは関係のあることを言えということである。 (1) の格率は,述べ方についての格率で,はっきりしない表現は使うなとか,簡潔に順序よく言えなどが含まれる。

これらは一見道徳律のように見えるが,それはグライスの意図するところではなく,また,この格率に従っているかどうかはあまり重要ではない。それは,会話が行われる場からの情報があり,聞き手に (3) があるからである。

むしろ格率に従っているという前提に立つことにより,論理的な意味あるいは文字通りの意味以外のことを伝えることもできる。これは一般に (4) と呼ばれている。このように,この会話の格率という概念は,会話のルールというよりも,実際の会話を考える上での (5) と考えるほうがふさわしい。

問1)

文章中の (1)  (5) に入れるのに最も適当なものを,次の1~4の中からそれぞれ一つずつ選べ。

(1)     1. 形式     2. 様態     3. 態度     4. 機会

(2)     1. 下品なこと     2. 曖昧なこと     3.     偽りとなること     4. 恥となること

(3)     1. 伝達能力     2. 推論能力     3. 文法能力     4. 交渉能力

(4)     1. 含意     2. 意義     3. 予想     4. 命題

(5)     1. 規範     2. 信念     3. 例示     4. 参照枠
 

問2)

ブラウンとレビンソンが提唱した理論で,話し手が聞き手との円滑なコミュニケーションのために行う最善の配慮のことを何というか。最も適当なものを,次の1~4の中から一つ選べ。

1. ストラテジー     2. レディネス     3. フェース     4. ポライトネス

解答

問1) (1)2     (2)3     (3)2     (4)1     (5)4

問2)  4

問題解説

問1)

(1) 「格率」は「公理」ともいう。哲学用語で「それに従うことが求められる行為の基準」を意味する。
(2) 「質の格率」は「真であることを言うこと」であるので,嘘,偽りを言ってはならない。
(3)(4) それぞれの格率に違反しているような発言があっても,聞き手は「協調の原理」に沿っているという前提のもとで,「推論」し,発話者の言外の意図(含意)を理解する。
(5) 1.「規範」というほど厳格なものではない。

問2)

 3. 「フェース」を脅かす行為を互いに避けようとするのが4. 「ポライトネス」である。

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