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外国人に対する「やさしさ」のさじ加減 ~地域住民のサポートとして『やさしい日本語』を使う重要性2~

2021/01/25

外国人を相手にする時、子供に話しかけるようにゆっくりやさしく話したり、「英語ならわかるだろう」と英語で話したりしていませんか。どちらも相手に対する配慮の現れなので、悪いことではありません。でも、外国の方の中には、「日本人の自然な日本語を聞きたい」と思っている人や、英語が話せない人もいます。では、どのような言葉で話せばいいのでしょうか。王子国際語学院・教務主任の佐藤先生が、外国人と話すときのコツを教えてくれました。

 

「外国人は英語ができる」とは限らない!?

 

最近では少ないと思いますが、「外国人=英語を話せる」と考えるのは軽率です。「私にわかる英語なら、外国の人には当然わかるはず」と。ともすると、自身の英語の苦手意識から、こう考えるかもしれません。しかし、実際はどうでしょうか。

 

例えば、前回のコラムで埼玉県蕨市に住む外国人の比率は高く、約10%と書きましたが、非英語圏の内訳は92.2%※1です。非英語圏の外国人が英語を話せるのかどうか、一概には言えませんが、話せなくても当然と考えておくべきでしょう。母国でも日本でも、彼らにとって英語は公用語ではないのです。

 

さらに、外来語の発音や、いわゆる和製英語の問題もあります。由来は英語でも、れっきとした日本語となっている言葉は多く、カタカナをそのまま読んでも伝わらないことが多いのは周知の事実です。これを反対の立場に置き換えてみると、例えば、韓国旅行に行った時に、現地の韓国人が「英語ならわかるのでは」と思い、「ポストミノル!ポストミノル!」と連呼しても、それが「バスターミナル」のことだとわかるのは難しいかもしれません。こういった場面では英語に頼ろうとせずに説明ができる方がいいですね。「やさしい日本語」の必要性が確認できます。

 

日本語学校のレッスンでは、教室にいる学習者全員が英語を話せるのであれば、言葉の説明などに英語を用いることもありますが、そうでない状況の方が実は多いのです。留学生として日本で学んでいる93.4%
※2がアジアの学生です。教室での英語使用には十分気をつけなければなりません。

 

時には思い切って「やさしくない日本語」を

もう一つ、前回のコラムではスピードと語彙コントロールについてお話ししました。次は過剰コントロールについてです。簡単に言うと、スピードと語彙をコントロールし過ぎてしまうことです。駆け出しの日本語教師によく見られる傾向です。

 

スピードは言うまでもなく個人差があるので、ここに焦点を置くのは避けますが、こう言った現象があるということだけ書き添えておきます。

 

語彙については、一つのモードに入ってしまうと意外と抜け出せないことが多いです。「です」「ます」で文章を短く区切ることは、やさしい日本語を使う場合に非常に重要なテクニックなのですが、これが過剰になると、「これは昨日、私が買いました、のペンです。」のように、過剰にやさしい文章で話してしまっているケースを見かけることが多々あります。(「これは昨日、私が買ったペンです。」の意味です)

 

「昨日、私が買ったペン」のような連体修飾を習う前は、やむを得ず例文のような表現を使うかもしれません。日本語の学習の課程において、連体修飾はいつ頃習うのでしょうか?それは日本語を教えている人じゃないとわかりませんよね。では、英語学習では同様の文法項目はいつ頃に習ったと思いますか?英語では、”This is a pen which I bought yesterday.”です。この”which”は関係代名詞、つまり、中学英語の文法項目です。日本語学習でも初級前半の項目として取り扱われることがほとんどで、留学生であれば入国前の学習要件に相当します。

 

一度学習した項目はむしろどんどん使って慣れさせる必要があるのですが、「やさしい日本語」の一つのモードが形成されると、これを徐々に変化させるのは容易ではありません。

 

また、これから学習する項目の取り扱いについても、語彙の過剰コントロールが見受けられます。「教科書に書いてない」「まだ勉強してない」といった理由で避け過ぎてしまうのは過保護です。例えば、ほとんどの人が持っている「スマホ」や、最近人気の「タピオカ」などの言葉は、新刊の教科書でなければ載ってないでしょう。逆に、こういった言葉は生身の人間が教えるべきです。日本語を学ぶときに必ず使わなければならない本も方法もありません。過剰コントロールが続くと、自転車の補助輪をずっとつけた走行練習のように、上達を阻んでしまうことがあります。

 

地域住民として外国人をサポートするという面でも、学習者の日本語は日々上達しているという視点を忘れずに、「やさしい日本語」を上手に使っていきたいですね。

 

【出典】
※1 統計わらび平成30年度版(蕨市)平成30年度の数値より「その他」を除いて算出
※2 日本語(アルク地球人ムック)2019年9月6日発刊